クルマに乗っていると、どこかしらから「カタカタ」「ギシギシ」「キュルキュル」などといった、普段聞きなれない異音が発生することがあります。
異音はたとえ小さな音であっても、車室内の静かな空間では不快な騒音に感じてしまうので、ディーラーにクルマを持ち込んで診断を依頼されることもあるでしょう。
ところが、ディーラーで診断をお願いしたのに「異音が確認できないために何もせず帰って来た」という経験をされた方も多いのではないでしょうか?
これはディーラーが異音診断をする際に「音の確認ができていない」ことが挙げられます。
ディーラーも故障していない箇所をむやみに交換することはしないため、異音の確認ができない場合は修理を施すことができません。
今回ご紹介する「異音が再現しやすく、伝わりやすいポイント」を抑えてディーラーで異音診断をすることで、クルマの気になる異音を早急に解消することができます。
前半は異音のメカニズムや種類、後半は伝えるためのポイントをご紹介しますので、じっくりと読み込んでみてください。
クルマの異音が発生するメカニズム
クルマの異音が発生するメカニズムというの実は数え切れない位あります。
ただ、ここでは私がディーラー勤務時代にお客様からの依頼が多かった車室内で気になる程度の異音のメカニズムを5つご紹介します。
- 気温による膨張や収縮による異音
- ネジやクリップの緩みによる異音
- 部品の劣化・消耗による異音
- ゴミや異物の付着による異音
- 製造工程の不具合による異音
気温による膨張や収縮による異音
クルマは金属や樹脂パーツを多用しており、外気温の変化により部品が膨張したり縮小することで異音が発生することがあります。
特に寒い冬の朝などは異音がしやすく、ダッシュボードからのキシミ音やサスペンションからコトコト音が鳴ったりします。
気温による異音は外気温に左右されるため、日中暖かくなると音が発生しなくなる傾向にあります。
ネジやクリップの緩みによる異音
クルマは走行することで常に振動しているので、振動によりネジが徐々に緩んでしまい異音が発生することがあります。
また、パネルなどのクリップ留めがされている箇所も振動により隙間ができることで異音が発生します。
ネジやクリップの緩みによる異音は、車室内で発生することが多いため異音箇所が特定しやすく、修理も短時間で簡単に行えることが多いです。
部品の劣化・消耗による異音
クルマを長期間使用していると、各部品の劣化や消耗により異音が発生しやすくなります。
部品の劣化・消耗による異音は「持続的に発生する」ことが多く、ディーラーに持ち込んでも音の再現確認が容易にできるため、自身で発生個所の特定をする必要がありません。
また、クルマは故障する前に異音を発生させることでドライバーに注意を促す作りとなっています。
例えばブレーキからの「キー音」はブレーキパッドの残量が少なくなることで、わざと音を発生させます。
ベルトなどのゴム製品も劣化することで「キュルキュル」と音が発生し、ベアリングは摩耗することで「ゴーゴー」と音が発生するため、持続的な異音がする場合はなるべく早くディーラーに持ち込むようにしましょう。
ゴミや異物の付着による異音
クルマが走行中に道路に落ちているゴミが付着することで異音を発生させることがあります。
例えばタイヤの溝に小石が挟まったり、ブレーキローターとバックプレートの間に小石が挟まる事で足回り付近から異音が発生します。
このような異音の場合、原因となる石やゴミを取り除くことで簡単に解消することができます。
製造工程の不具合による異音
新車を納車して間もないのに、異音が発生することがあります。
特に新型車は実用段階での実績が乏しいため、試験段階では確認できない不具合を発生させることがあるのです。
この場合、メーカーから対策部品への交換や対策方法などがディーラーへ案内されていることが多く、異音が再現できなくても内容の確認だけで対処できることが多いです。
確実な修理のために状況を確認しておく
クルマの使用状況は人により異なるので、異音が発生する状況も様々です。
より確実な修理を実施するためにも「発生状況を確認しておく」ことが最も重要になります。
ここでは、ディーラーが確実な修理を実施できるようにするために、自身で確認しておくことをまとめてみました。
- 発生する音の種類・場所
- 異音の状況(特定の条件下のみ・不特定)
- エンジンの状態(始動時・冷却時・走行時)
- 発生する時間
上記の状況を詳しく説明することで診断が行いやすくなり、ディーラーで異音の再現がしやすくなります。
発生する音の種類・場所
ディーラーで異音診断をする際に重要になるのが「どのような異音なのか?」です。
擬音で表す表現方法は人により異なりますが、たとえ多少の違いがあっても診断する側からすると異音箇所を発見する重要な手掛かりとなります。
作業する整備士は擬音の種類により、大まかな場所や原因を特定することができるため表現方法(擬音)の伝え方はとても大切なのです。
また、異音がする箇所については自分で細かく特定する必要はありません。
大まかな発生個所さえ分かっていれば、整備士にその箇所を伝えることで修理時間の短縮に繋がります。
より分かりやすく相手に伝えて異音を早期解消するためにも、表現方法(擬音)と伝え方は覚えておきましょう!
異音の表現方法(擬音)・伝え方を以下に記載してみました。
- パネルやダッシュボードからのビビり音(きしみ音):「ビリビリ」「ジリジリ」「キシキシ」など
- エンジン付近からの異音:「キュルキュル」「カチャカチャ」「コトコト」など
- 足回り周辺からの異音:「ギシギシ」「コトコト」「カツカツ」「ゴーゴー」など
異音診断の際に「どのような音」かを聞かれるので、表現方法の参考にしてみてください。
- エンジン付近
- ○○足回り周辺 (例:右前足回り周辺)
- インパネ・ダッシュボード・○○ドア
- リアトランク周辺・リアハッチ周辺
大まかな場所を伝えることで、発見が容易にできます。
自分で異音箇所が特定できている場合は、受付時に直接場所を伝えるようにしましょう。
異音の状況(特定の条件下のみ・不特定)
持続的に発生している異音ではない場合、「ディーラーに持ち込んだら音が鳴り止んでいた」と言うこともあります。
異音発生の状況を覚えておくことで、ディーラーでの再現も容易になり確実な修理に繋がるのです。
走行中に特定の場所で発生する異音は、カーブや道の凹凸などの外的要因が影響している可能性があるので、異音発生時の道路状況や走行状況を確認しておくことも大切なポイントです。
エンジンの状態(始動時・冷却時・走行時)
道路状況や走行状況に関係なく異音が発生することもあります。
その場合、エンジンの状態を確認することで発生個所が特定しやすくなるため、異音の発生時にエンジンがどのような状態だったのかを確認しておきましょう。
また、振動による異音の場合はエンジン回転数の影響を受けやすいため、不特定な異音発生は発生時のエンジン回転数も確認しておくことがポイントです。
発生する時間
ここで言う「発生する時間」はAM○:○〇などといった時間ではありません。
エンジンを始動してから何分後に異音が発生し、どれくらいの時間音が続いていたのかを表すための時間です。
クルマには様々な部品が使用されているため、原因によっては特定の部品が作動して発生する異音もあります。
発生する時間を確認しておくことで作動する可能性がある部品を特定することができ、原因の特定に繋がります。
スマホで録画しておくのも有効
時間や場所が関係なく、異音はするけど発生するタイミングが不規則な場合はスマホで録画しておくといいでしょう。
運転中にスマホの操作をするわけにはいかないので、停車中もしくは同乗者に録画してもらうようにしましょう。
録画した映像で異音が聞き取れることを確認出来れば、ディーラーも修理などの対策が行えます。
確実な修理を行うための依頼方法とは?
異音の状況確認ができたら、ディーラーに持ち込んで診断を依頼しましょう。
ここでは、より確実な修理が行えるようにするための依頼方法をご案内します
- 状況を説明する
- 再現方法を伝える
- 時間に猶予を持たせる
状況を説明する
上記で確認した異音状況の説明をしましょう。
「音の種類・場所」「異音の状況」「エンジンの状態」「発生する時間」を伝えることで、原因の特定が容易になり修理を行いやすくなります。
再現方法を伝える
発生状況を説明した後は、再現方法を伝えるようにしてください。
何度も言いますが、ディーラーも故障していない箇所をむやみに交換することはしないため、異音の確認ができない場合は修理を施すことができません。
必ず異音を再現するために必要な状況を伝えておきましょう!
また、自身で異音の再現が可能な場合は整備士や受付スタッフに同乗してもらい異音を直接確認してもらうことで修理が行いやすくなります。
時間に猶予を持たせる
「異音が発生したから、ディーラーに持ち込んで直ぐに修理」という訳にはなかなかいきません。
ディーラーも様々なお客様のクルマを整備しているので、緊急を要する作業でない限りクイックな対応は困難になります。
また、時間が無い中で診断を行うと確認してもらいたい箇所が見てもらえず「様子見」として何も行わずにクルマを返却される可能性があります。
異音診断は時間を要する作業なので、数日間クルマを預ける気持ちで依頼するようにしましょう。
まとめ
上記で紹介した【確実な修理のために状況を確認しておく】【確実な修理を行うための依頼方法】を実践することで、ディーラーで異音診断を依頼しても「異音が確認できないために何もせず帰って来た」と言うことは無くなり、気になる異音を解消することができます。
最後にもう一度内容を確認しましょう。
- 発生する音の種類と場所を確認する
- 異音が発生する状況を確認しておく
- 異音発生時のエンジン状態を確認しておく
- 発生する時間を計測しておく
- ディーラーに依頼する際は「時間に猶予」をもち、「状況説明」「再現方法」を説明する
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